2012年度研究報告

2012年度は、2011年の研究報告で述べたヤコノール生産における課題である、

  1. 年に1回しか収穫できないこと
  2. 製造コストが割高であること

について重点的に調査しました。

ヤーコンは、日本全国各地で生産可能という利点を持ちます。とは言え、1.の『年間収穫回数制限』の克服については、品種改良などを行わない限り、現状では困難だと考えています。

その打開策として、『長期保存』を可能にすることで、ヤコノール原料を備蓄し、年間を通じてヤコノール(バイオエタノール)の生産を実現しました。

具体的な方法として、今回は「収穫後のヤーコン茎・葉を乾燥粉砕し、貯蔵」することを実行しました。この過程において、特に規格外ヤーコン根塊部については『冷暗所での貯蔵が可能であること』、時間経過と共にヤーコンに含まれるフラクトオリゴ糖が単糖化するため『アルコール発酵時の変換効率が上がること』がわかりました。

2.の『製造コスト』の削減について、今年度は、蒸留発酵工程等において必要となる電力を「太陽光発電」でまかないました。この結果、ヤーコンの収穫からヤコノールの収集までのコストが以下のようになりました。なお、この金額に人件費は含みません。

  1. 収穫・運搬   ⇒ガソリン代    :¥12
  2. 乾燥      ⇒自然乾燥     :¥0
  3. 粉砕      ⇒電力使用     :¥0
  4. 繊維質分解・糖化⇒セルロース分解酵素:¥52
  5. 発酵      ⇒発酵酵母     :¥24
  6. 蒸留・精製   ⇒電力使用     :¥0

本試験の結果では、ヤコノール生産のトータルコストは¥88/リットルとなりました。これは実験過程におけるデータであるため、大量生産が可能となれば、「4. セルロース分解酵素」と「5. 発酵酵母コスト」は下がることが見込まれます。ただし、市場へ投入するためには、¥40/リットル以下のコストを実現する必要があるでしょう。

また今回、最もコストがかかる電力を自然エネルギーである太陽光発電でまかなったことにより、完全な『カーボンニュートラル』あるいは『再生可能エネルギー』の実現に向けて大きく前進しました。

今後は、製造工程で余った繊維質等を燃料にして、小型発電機への応用や農業用ビニールハウス暖房への応用も検討していきます。そして、弊所の技術を利用し、協力してくださる自治体や企業様に期待し、日本のエネルギー自給率向上に貢献したいと考えています。